「学力」の経済学
【「学力」の経済学 中室牧子著】
教育を経済面で考えるにはエビデンスが必要であり、よく話題になりがちな
- ご褒美の有益性は?
- ご褒美はお金?ゲーム?
- いつ教育に投資すべきか
- 勉強は大切なのか?
- 少人数学級の効果は?
- いい先生とはどんな先生のことか?
などについて実際のエビデンス(多くが米国など海外のもの)から考察されています。
興味深かったのは、教員免許の有無が教育の質に差が出るのかというもの。
通常であれば、免許を持っている方が質がいいと思いますよね。
しかし、実際は差が小さかったり、差がなかったりしたそうです。
(Decker, P. T., Mayer, D. P. & Glazerman, S. (2004). The effects of Teach for America on students: Findings from a national evaluation. University of Wisconsin-Madison, Institute for Research on Poverty. /本書より)
教育経済学者の間では、教員免許の有無による教員の質の差はかなり小さい事がコンセンサスとなっているようです。
これは教員に限らず、どの職域にも言えることだと思います。
業務独占化されている資格は一概には言えませんが、知識、技術があれば問題ない分野も多々あります。
栄養士もその一つだと思います。
この一年で栄養学が大きく変わりました。
医師を始めとする多職種はもちろん、一般の方がネットで栄養学を生化学的に理解して、実践して問題を解決してしまう時代になりました。
新しいエビデンスが出るのを待てるほど悠長にしていられなくなっています。
これは喜ばしいことなのですが、栄養士としては由々しき事態です。
一般的に栄養士はインプットは得意ですがアウトプットは苦手なことが多いです。
もともとそういった方が栄養士になったということもあるのでしょうが、栄養士の多くが一人職場で相談する相手がおらず物事に対する視野が狭いこと、給与形態の問題、給食委託業者参入による栄養士-栄養士間の業務系体格差、出産育休や退職による調理献立スキルの持ち出しなど様々な問題が関わっていると思います。
ただ、狭い視野に留まっている人を助けられるのは人の繋がりだと思います。
なので面倒でも分野問わず研修会や学会などへの参加は意味をなすと思います。
ただ、研修への参加が質には影響を与える因果関係は無いと本書で述べられていますので、勉強≦コミュニティの獲得、強化といったスタンスで参加するのが良いのでしょうね。
栄養士が生き残れるために何が必要か…
栄養士の職域にもよりますが、栄養の生化学的な理解、栄養教育論の理解、輸液やサプリも含めた非食品栄養の理解、確立してきている様々な栄養療法の理解と中立的な見解を持つこと、何より栄養と心を考慮した調理技術だと思います。
あ、因みにご褒美はアウトプット(テストの結果など)に対してではなく、インプット(本を読んだら、とかワークしたらなど)に対して与えると良いそうです。
他にも多くの事項が書かれていますので、オススメです(^^)