江部先生の過去ブログで、絶食、糖質制限食、ケトン体、インフラマソーム阻害・・・炎症の抑制という記事がありました。
①
『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する可能性が示唆された』
②
『絶食で過剰な炎症産生源となったインフラマソームの働きを抑制するのは、
ケトン体がサーチュインを介してミトコンドリア機能を改善させる事によって起こるのではないか』
→ケトン体高値がインフラマソームの関与する慢性炎症を抑制することにより、感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に役に立つ可能性がある、とのこと。
糖質制限によってケトン体優位の代謝になることが炎症を抑えたり、慢性疾患の改善につながる可能性があるというのは興味深いです。
抗炎症、炎症抑制作用が期待できるとなれば、運動による筋負荷後の筋肉痛が軽減されることも考えられます。
先日、私は数か月ぶりにフットサルをしました。
その時もファットローディングを行い休憩を挟みながらも2時間激しい運動をした割には、翌日以降筋肉痛に悩むことはありませんでした。
中高生時代、部活動で筋トレ、走り込み、日々のトレーニングではよく筋肉痛に悩んでいましたが…
これもケトン体の抗炎症作用が筋肉を保護してくれていたのでしょうか。
次回、さらなる負荷、長時間で検証したいです(機会があるかどうか…)。
[以下、引用]
絶食、糖質制限食、ケトン体、インフラマソーム阻害・・・炎症の抑制2016年02月06日 (土)こんにちは。
たがしゅう さんとYamamoto_ma さんから
インフラマソームに関するコメントをいただきました。
ありがとうございます。
東京銀座クリニックの福田先生のサイト、大変参考になります。たがしゅう先生は、神経内科医なので、
私よりはミトコンドリアやサーチュインに関して詳しいと思います。2016/2/4(木)の本ブログ記事
「炎症シグナルの指揮者インフラマソームとケトン体。」で紹介した論文
および、たがしゅう先生のコメントにある今回の論文
の結果をを合わせて考えてみると①
『ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)が炎症の要となるインフラマソームを直接阻害することで炎症を抑制する可能性が示唆された』②
『絶食で過剰な炎症産生源となったインフラマソームの働きを抑制するのは、
ケトン体がサーチュインを介してミトコンドリア機能を改善させる事によって起こるのではないか』となります。
①②に関して、
たがしゅう先生のご考察に私も賛成です。私自身は、34歳のときに本断食を行い、
その後12~13回、甲田光雄先生のすまし汁断食を行いました。古来から断食(絶食)はなぜかわからないけど、
様々な病気や症状に治療効果があるという事が知られていました。
だからこそ私も十数回も断食したわけです。絶食療法(断食)の効果の謎だった部分が、
ケトン体の存在により、一定解明されてきたことは極めて興味深いです。
たがしゅう先生、ご指摘ありがとうございます。そしてスーパー糖質制限食やケトン食なら
絶食療法(断食)をしなくても
血中ケトン体は高値となるので、
①と②の効果が期待できます。ケトン体高値が、
インフラマソームの関与する慢性炎症を抑制することにより、
感染症・糖尿病・動脈硬化・自己免疫疾患・虚血傷害など、様々な疾患の改善に、
役に立つ可能性があります。スーパー糖質制限食で、糖尿病や肥満だけではなく、アレルギー疾患など含めて様々な生活習慣病が改善する理由の一つと言えると思います。
江部康二
【16/02/04 たがしゅう
謎が解き明かされてゆく
江部先生いつもお世話になります。
興味深い情報を有難うございます。インフラマソームと言えば、私も最近次のような論文を読みました。
Traba J, et al. Fasting and refeeding differentially regulate NLRP3 inflammasome activation in human subjects. J Clin Invest. 2015 Nov 3;2015. pii: 83260. doi: 10.1172/JCI83260.
背景:
NLRP3インフラマソームの活性化は代謝機能障害と関連があり、間欠的絶食はNLRP3インフラマソーム関連疾患の臨床症状発現を改善させる事が示されてきている。
傷害関連分子パターンとしての機能があるミトコンドリアの混乱がNLRP3インフラマソームの活性化を悪化させるので、
我々は絶食がサーチュインに介在されるミトコンドリア完全性の増大を介してインフラマソームの活性化を鈍化させるかどうかを調査した。
方法:
我々は19名の健常ボランティアに対し臨床研究を行った。それぞれのボランティアに24時間の絶食を行い、その後カロリーが固定された食事を与えた。
血液検査を絶食中と絶食後の食事を与えた状態とで行い、NLRP3インフラマソームについて解析を行った。
さらにサーチュインアクチベーター、ニコチンアミドリボシドのNLRP3インフラマソームに対する影響を評価するために追加で8名の健常ボランティアを登録した。
結果:
絶食/再摂食研究では、個々人は絶食期には再摂食期に比べてNLRP3インフラマソームの活性化が少なくなる事が判明した。ヒトマクロファージの系列では、ミトコンドリアに富むサーチュイン脱アセチル化酵素、SIRT3の欠失がミトコンドリアでの活性酸素種の過剰産生を介してNLRP3インフラマソームの活性化を増加させた。
さらに遺伝的および薬理学的にSIRT3の活性化は健康ボランティアや対象者の絶食中ではなく
再摂食時に集められた検体から抽出された培養細胞や白血球でのミトコンドリア機能の向上と並行してNLRP3活性を鈍化させた。
結論:
まとめると我々のデータは、栄養水準がNLRP3インフラマソームを制御し、それは部分的にSIRT3を介したミトコンドリアの恒常性制御を通じて行われている事を示している。さらにこれらの結果は脱アセチル化酵素に依存するインフラマソームの減衰がヒトの疾患を標的にする事に従うかもしれない。
ケトン体にはミトコンドリア機能改善作用がある事も示されていますので
(Stafstrom CE, Rho JM. The ketogenic diet as a treatment paradigm for diverse neurological disorders. Front Pharmacol. 2012;3:59. Epub 2012 Apr 9. )これらの話を総合しますと、
「絶食で過剰な炎症産生源となったインフラマソームの働きを抑制するのは、
ケトン体がサーチュインを介してミトコンドリア機能を改善させる事によって起こるのではないか」と理解を深める事ができます。
そうであるならば、同じくケトン体を産生できるスーパー糖質制限食にも同様の効果が期待できる事は容易に理解できます。
古来から断食(絶食)はなぜかわからないけど効果があるという事は人から人へと伝わり、
時代の流れの中で脈々と受け継がれてきました。
その謎だった部分が、糖質制限の理論を通じて解き明かされていく様子には非常に興味深いものがありますね。】
【16/02/05 Yamamoto_ma
参考まで・・
江部先生インフラマソーム関連で、
東京銀座クリニックの福田先生が丁寧に記事にされておりましたので紹介いたします。「471)糖尿病とインフラマソームとケトン食」
http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/75825570b06b5aa215c208932221cc】[引用、ここまで]